インプラント治療は、安全性に配慮された治療ではありますが、誰でも受けられるというわけではありません。
具体的には、虫歯や歯周病の方、未成年の方などは受けるのが難しく、特定の病気を患っている方も、治療は困難になります。
今回は、インプラント治療を受けるのが困難な病気をいくつか解説します。
骨粗しょう症
インプラント治療を受けるのが難しい代表的な病気としては、まず骨粗しょう症が挙げられます。
健康な身体の場合、骨は毎日つくられたり溶けたりしていますが、骨粗しょう症の方は溶ける量が多く、骨がどんどん弱っていきます。
そのため、骨が溶けて弱くなるのを防ぐ薬、主にビスフォスフォネート系製剤を服用しますが、こちらの薬を服用している期間に抜歯やインプラント治療を行うと、炎症がひどくなったり、顎の骨が壊死してしまったりすることがあります。
一型糖尿病
インプラント治療を行うのが困難な病気としては、一型糖尿病も挙げられます。
一型糖尿病とは、糖尿病の一種で、インスリンをつくる細胞が壊されることにより、血糖値が上昇する病気のことをいいます。
一型糖尿病にかかっている方は、血液中のブドウ糖濃度が高く、血流が悪くなります。
そのため、免疫力が低下し、傷が治りにくくなるだけでなく、歯周病や感染症にもかかりやすくなります。
また、インプラント体と骨が結合しにくくなるため、インプラント治療が失敗するリスクも高く、内科の主治医の指導のもと、血糖値のコントロールが確実に行えない限り、インプラント治療を受けることはできません。
心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中を起こしてから6ヶ月以内
心筋梗塞や脳梗塞、脳卒中などの全身疾患を引き起こしてから6ヶ月以内の方も、インプラント治療を受けるのは難しいです。
これらの病気の発症から6ヶ月以内は、血液をサラサラにする薬を服用していることが多く、出血すると血が止まりにくくなる状態です。
また、身体に負担がかかっていることも多く、免疫力も低下していることが考えられるため、外科手術を伴うインプラント治療を行う時期としては適していません。
重度の歯周病
重度の歯周病を患っている方も、そのままの状態でインプラント治療を受けるのは難しいです。
口内の衛生状態が悪いと、インプラント治療後、インプラント周囲炎を発症するリスクが非常に高くなります。
こちらは症状がひどい場合、再治療を受けなければいけません。
また重度の歯周病の方は、歯茎が天然歯を支えきれないほどブヨブヨになっているケースも多いです。
このような歯茎にインプラントを埋入しても、うまく定着しない可能性は極めて高いです。
そのため、まずは歯周病の治療とプラークコントロールが必須です。
重度の腎疾患
腎疾患は、腎臓の機能が低下するさまざまな病気の総称です。
代表的なものには糖尿病性腎症、高血圧による腎硬化症などが挙げられます。
また重度の腎疾患を患っている方も、インプラント治療を受けるのは困難になります。
なぜなら、このような病気の方は全身状態の管理が難しく、インプラント治療を行うにあたって支障が出やすいからです。
ちなみにここでいう重度の腎疾患には、血液透析を受けている場合などが該当します。
放射線治療の経験がある
過去に放射線治療を受けたことがある方も、インプラント治療を受けるのが困難になります。
放射線治療は、がん細胞を破壊するために高エネルギーの放射線を用いて行うがんの治療法です。
外科療法や化学療法と並ぶがん治療の3本柱の一つで、がんの根治や症状の緩和を目的とし、がん細胞のDNAにダメージを与えることで細胞を死滅させます。
また過去にがんを患い、放射線治療を受けた経験がある方は、顎骨への放射線照射によって骨の治癒能力が低下し、骨が壊死するリスクがあります。
そのため、基本的にはインプラント治療を受けるのが難しいです。
免疫不全疾患
免疫不全疾患は、身体の免疫システムが正常に機能しないために、細菌やウイルスなどの病原体に対する抵抗力が低下する疾患の総称です。
発症することで感染症にかかりやすくなったり、感染症が重症化・長期化したりすることが特徴です。
またHIVなどの免疫不全疾患を患っている方は、原則インプラント治療を受けることができません。
理由としては、インプラント治療に感染症のリスクが存在するからです。
インプラント治療は、歯茎を切開するなどの外科治療を伴うものです。
そのため、細心の注意を払っていても、術後の感染症のリスクを完全に排除することはできません。
このような治療について、免疫不全疾患を患っている方が受けると、感染症のリスクは極めて高くなります。
インプラント治療後に感染症を発症すると、歯茎の腫れや痛みだけでなく、インプラント周囲炎への進行やインプラントの動揺などが見られる場合もあります。
この記事のおさらい
今回の記事のポイントは以下になります。
・骨粗しょう症の方は、服用する薬剤の作用により、インプラント治療後の副作用が出やすくなる
・一型糖尿病の方はインプラント体と骨が結合しにくく、免疫力も低下するため、手術に失敗する可能性が高くなる
・心筋梗塞や脳梗塞、脳卒中を引き起こしてから6ヶ月以内の方も、インプラント治療を受けるのは難しい
以上のポイントはしっかりと押さえておきましょう!

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