インプラント治療は、失った歯の部分に人工歯根を埋め込む治療です。
そのため、土台となる顎の骨には、十分な厚みや幅が必要です。
しかし、中には顎の骨が痩せてしまい、そのままではインプラント治療が困難な方もいます。
ここからは、顎の骨が痩せる主な原因について解説したいと思います。
歯周病の進行
歯周病は、プラークが歯と歯茎の間に侵入し、歯を支えている歯槽骨を破壊することで、歯が脱落してしまう症状です。
こちらは、初期段階の場合、歯の痛みなどの自覚症状がほとんどないため、知らないうちに症状が進行していることが多いです。
また、歯周病によって破壊された歯槽骨では、古い骨が壊される骨吸収がはじまり、歯が脱落するほど重度まで歯周病が進行している場合、顎の骨はかなり痩せ細ってしまい、インプラント治療に耐え得る強度に達していない可能性が高いです。
合わない入れ歯の使用
歯を失った方の中には、インプラント治療を行う前から、すでに入れ歯を装着しているという方も多いです。
しかし、自身の口内に合わない入れ歯を使用していると、過剰な圧力が入れ歯にかかり、負担に耐え切れず、顎の骨が痩せてしまうことがあります。
また、入れ歯が合わない原因としては、単純に最初から合っていないことだけでなく、加齢などによって歯茎の形状が変化し、適応できなくなることも挙げられます。
そのため、入れ歯を使用する場合には、定期的に検査を受け、現在の口内と形状が合っているかどうかを確認し、必要に応じて調整を行わなければいけません。
生まれつき骨が薄い
インプラント治療に必要な顎の骨には、痩せて少なくなってしまうことだけでなく、生まれつき骨が薄いというケースも見られます。
上顎の骨のすぐ上、頬骨の奥には、上顎洞という大きな空洞があります。
こちらが生まれつき下側、つまり口の近くにある方は、上顎の骨が通常よりも薄くなっています。
また、このような方が上顎の奥歯を失った場合、顎の骨が口側と上顎洞側の両方から吸収され、さらに骨が薄くなることが考えられ、こうなると現状でのインプラント治療は難しくなります。
歯が抜けた状態を放置する
虫歯などの原因により、歯が抜けた状態を放置すると、少しずつ顎の骨は痩せていきます。
こちらは、刺激を与えられなくなった部分は衰えていくという人間の身体の特徴が関係しています。
歯と歯茎が健康であれば、咀嚼によって顎の骨を刺激し続けることができるため、十分な骨の量や厚さを維持できます。
一方虫歯などで歯がない状態が続くと、歯を失った部分からの刺激は顎の骨に伝わらなくなり、その部分の顎の骨が衰えます。
もちろん歯を失った本数が多ければ多いほど、顎の骨の劣化は顕著に見られるようになります。
加齢
単純に年齢を重ねることでも、顎の骨は痩せ細っていきます。
人が生まれてから成人するくらいまでの成長期では、骨芽細胞の働きが強く、新しい骨がつくられて身体が成長します。
背骨は20歳くらい、手足の骨は30歳くらいまで増加するとされています。
その後30~40代で、骨造成と骨吸収のバランスが丁度良くなりますが、それ以降は徐々に骨形成の衰えが著しくなってきます。
そのため、特に高齢の方は骨造成を行わずにインプラント治療を受けるのが難しいケースも多いです。
疾患
疾患が原因で、顎の骨が著しく痩せてしまうこともあります。
例えば口や顎の近くで腫瘍が見つかった場合、進行すると周囲の組織や歯も侵食するため、必然的に顎の骨が少なくなります。
特にがんの場合は骨の代謝を乱すため、骨が脆くなって少しの刺激で骨が割れやすくなります。
また口や顎の周りに腫瘍がなかったとしても、転移によってがんが顎の骨に影響を与えることがあります。
ちなみに疾患というと高齢者の方が発症しやすいイメージですが、若い方も疾患で骨が痩せることはあります。
例えば骨粗しょう症などは、年齢が若い方でも十分に発症の可能性があります。
骨が足りない状態で無理やりインプラント治療を行うとどうなる?
顎の骨の量が不足しているにもかかわらず、無理やりインプラント治療を行おうとすると、十分な結合が得られずインプラントが不安定になります。
ひどい場合、人工歯根が揺れたり抜け落ちたりすることも考えられます。
また土台となる骨が不十分だと、治療の安全性や見た目の美しさにも悪影響が及びます。
例えば骨の高さが不十分な場合、人工歯根が骨を突き破ってしまったり、歯茎から露出したりする可能性があります。
これらの理由により、インプラント治療を受けたくても、そのままの状態では受けられないという方が出てきます。
患者さん側が良くても、歯科クリニック側に断られてしまうケースがほとんどです。
ちなみに骨の量が足りない場合はGBRやサイナスリフト、ソケットリフトなどの方法により、新しい骨を造成しなければいけません。
この記事のおさらい
今回の記事のポイントは以下になります。
・歯周病が進行すると、歯槽骨が破壊され、顎の骨も痩せ細ってしまう
・合わない入れ歯を使用していると、入れ歯に過剰な圧力がかかり、顎の骨が痩せることがある
・生まれつき顎の骨が薄い方も、そのままインプラント治療を受けるのは難しい
・骨が薄い方が上顎の奥歯を失うと、さらに骨が薄くなることが考えられる
以上のポイントはしっかりと押さえておきましょう!
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