同居する家族に指摘され、初めて自分が“歯ぎしり”していることに気づいた、という方もいるでしょう。
歯ぎしりは、歯にさまざまな悪影響を及ぼすため、放置してはいけません。
今回は、具体的にどのような影響が出るのか、また、防止するための対策もあわせて解説します。
歯ぎしりの概要
無意識のうちに歯を食いしばったり、擦り合わせたりしてしまう症状を歯ぎしりといいます。
特に、睡眠中に多く見られるものは“グライディング”と呼ばれ、横方向に歯をギリギリと擦り合わせる症状を指します。
本来、リラックスした状態の場合、上下の歯の間には隙間があり、食事や会話のとき以外に触れ合うことはありません。
しかし、ストレスが溜まったり、アルコールの摂取量が増えたりすると、いつの間にか歯ぎしりにより、歯が触れる機会は多くなってしまいます。
ちなみに、上下の歯をグッと噛みしめる“クレンチング”は、睡眠中ではなく日中起きているときに生じるケースも多いです。
歯ぎしりが歯に与える影響
歯ぎしりを放置していると、被せ物や詰め物が取れる可能性があります。
一般的に、被せ物や詰め物にはある程度寿命がありますが、歯ぎしりの症状が見られる場合、本来の寿命まで機能を維持できません。
もちろん、歯ぎしりは歯そのものにも悪影響を及ぼします。
特にグライディングの症状が多く見られる方は、歯同士を強い力で擦り合わせるため、エナメル質が剥がれ、弱い部分が剥き出しになってしまいます。
このような状態になると、当然虫歯のリスクは高まってしまうため、注意しなければいけません。
その他、歯ぎしりが歯に与える悪影響には、主に以下が挙げられます。
・歯が横に広がる
・知覚過敏になる
・歯根が割れる など
歯ぎしりにおけるその他の影響
歯ぎしりには歯の摩耗や顎関節症、頭痛や肩こりといったデメリットもあります。
歯ぎしりを放置すると少しずつ歯が擦り減り、強度が落ちてしまいます。
さらに歯の高さが変わってしまうため、噛み合わせにも影響が出やすいです。
また歯ぎしりは顎関節に過度な負担をかけ、顎関節症の原因になることもあります。
顎の異音や開口障害などが出ている場合、顎関節症の可能性が極めて高いです。
その他、歯ぎしりによる筋肉の緊張は、頭痛や肩こりを引き起こすことも考えられます。
頭痛や肩こりが慢性化すると、日中の仕事や学習などに集中できなかったり、睡眠の質が低下したりするおそれもあります。
歯ぎしりにメリットはあるのか?
ここまで歯ぎしりの良くない影響について触れてきましたが、逆に歯ぎしりを行うことにメリットはあるのでしょうか?
メリットと言えば、ストレスを解消できることや唾液の分泌促進、脳内麻薬の分泌などが挙げられます。
歯ぎしりは、無意識のうちにストレスを解消する行為となる場合があります。
特に睡眠中に強く歯を擦り合わせることで、日中のストレスを開放する役割を果たすことが考えられます。
また歯ぎしりによって唾液が分泌され、食道に逆流した胃酸を中和し、炎症を防ぐ効果があるという説も存在します。
さらに、歯ぎしりや食いしばりは、βエンドルフィンという脳内麻薬を分泌させ、一時的に気持ち良さを感じることがあります。
しかしこれらのメリットとデメリットを天秤にかけたとき、やはりデメリットの方が大きいため、歯ぎしりは基本的に行うべきではありません。
歯ぎしりを防止するための対策
歯ぎしりの主な原因はストレスであるため、まずは対策の第一歩として、ストレスを軽減させることを意識しましょう。
例えば、運動やストレッチをしたり、就寝前に好きなことをする時間を作ったりと、自身に合ったストレス解消法を実践することが大切です。
その他、就寝前のアルコールの摂取量、タバコの吸う本数を減らすだけでも、症状がかなり改善される可能性があります。
ナイトガードも歯ぎしり対策として効果的
本格的に歯ぎしりを改善させたいのであれば、ナイトガードを使用するのが効果的です。
ナイトガードは、就寝中の歯ぎしりや食いしばりによる歯や顎へのダメージを防ぐために使用される、マウスピース型の装置です。
ナイトガードを装着することで、上下の歯が直接触れるのを防ぎ、歯にかかる負担を分散させ、歯の摩耗や欠損だけでなく顎関節への負担も軽減します。
またナイトガードには、やわらかい素材でできたソフトタイプと、硬い素材でできたハードタイプがあります。
歯科クリニックにおいて、患者さんの歯型に合わせてオーダーメイドで作製されます。
ナイトガードを使用する際は就寝前に装着し、朝起きたら外します。
定期的に歯科クリニックで状態をチェックし、必要に応じて調整や交換を行います。
ちなみにナイトガードの作製費用は、保険診療で数千円程度です。
自由診療の場合は数万円程度になることがあります。
ただし、ナイトガードはあくまで歯ぎしりによるダメージを軽減するものであり、歯ぎしり自体を根本的に治すものではありません。
この記事のおさらい
この記事のポイントは以下になります。
・無意識のうちに歯を食いしばったり、擦り合わせたりしてしまう症状を歯ぎしりという
・歯ぎしりは日中起きているときに生じることもある
・歯ぎしりを放置すると、被せ物や詰め物が取れたり、エナメル質が剥がれたりとさまざまな影響が出る
・ストレス軽減、アルコールやタバコの制限で歯ぎしりは改善される可能性がある
以上のポイントはしっかりと押さえておきましょう!
患者様のことを最優先に考えた、オーダーメイドの治療プログラムで対応させて頂きます。